2019年 11月 & 12月

2019年が終わり、 2020 年を迎えました。今回は、昨年の締めくくりのご報告となります。 ラオ・フレンズ小児病院(LFHC)に来ている患者さんの民族の割合をグラフにし(左)、訪問看護の民族割合グラフ(右)と比較してみました。訪問看護の患者さんは毎月変動があるので、12月のみを参照して作成しましたが、割合は毎月ほぼ同じです。直接来院している患者さんはラオ族が多く、その中で家庭でのフォローアップに対するニーズが高いのはモン族とカム族である、ということが読み取れます。

色々な理由で遠くなっている医療を近づけることが、子供たちの健康な生活につながるのだと改めて思う今日この頃です。




LFHCでは、必要に応じてアウトリーチスタッフが訪問看護を提供しています。そのほとんどが、一度LFHCに来院し、様々な理由で家庭でのフォローアップが必要な患者さんです。たとえば、栄養失調や脳性麻痺、HIV感染症、ネフローゼなど長期的に管理が必要な患者さんに対して訪問計画を立て、1〜2か月に1回を目安に訪問。訪問時には、健康状況はもちろん、服薬状況、家族の問題などを総合的にチェックします。

院内で病気を治療することはできますが、取り戻した健康を維持するのは家庭です。つまり、家庭でのケアや環境がとても重要であり、院内診療と訪問看護は、継続されたケアの一環なのです。チームアプローチですね。 院内外でのケアがしっかりと継続されるように、情報共有の場として今回、フィジカルセラピストから脳性麻痺の患者さんに対するケアについての講義を実施。身体のポジショニング、運動、食事の食べさせ方など、院内と同じように指導できるよう、実習も行われました。

こういった場を持つことで、患者さんや家族へ統一したケアの提供が期待できると共に、スタッフにとってもチーム力を高めるとても良いチャンスになります。それぞれの部署が別々に働いているのではないという意識が高まりますね。今後もこのような機会をもっと増やしていこうと思います。



フィジカルセラピストのラー君(右水色)がパワーポイントを使っての説明です。

前々回から登場しているカムヤイちゃん。脂肪が含まれない特別なミルクでないと身体に異常が出てしまうために困っていたところ、特殊ミルクのご寄付のオファーをいただき、現在まで元気に育っているということをご報告してまいりました。先月から少しずつ離乳食を始め、その後も問題なくすくすくと育っています。2週間に1度は来院してこまめにチェックをしていますが、ここまで来てやっと少し安心できました。このまま順調に育ってくれることを祈ります。ご覧のように、ずいぶんとしっかりとした顔つきになりました。依然みんなのアイドルです!




下の写真は、アイ君(右赤ジャケット)と妹ちゃんです。
昨年の夏は日本脳炎が流行し、入院ベッドの半分近くが常に日本脳炎、もしくはその疑いの患者さんという状態が長く続きました。日本脳炎は、すっかり良くなる子もいれば、障がいが残ってしまう子もいて、またその程度も様々です。

アイ君には重度の障がいが残り、不穏状態で時々大暴れするために、お母さんが常に抱きかかえていました。大きなアイ君なので、それはとても大変。加えて食べ物も飲み込むことができず鼻からの管を使っており、家族はかなりのストレスを抱えながらの退院となりました。管の管理や不穏状態の管理など家族への継続支援が必要とみなされ、アウトリーチスタッフが毎週、電話で状況確認をしながらご両親を励ましていました。それから数か月。徐々に落ち着いてきたと聞き訪問予定をしていたところ、ひょっこりと来院!アイ君からは苦悶の表情が消え、元気そう。辛抱強い治療とホリスティックな継続ケアが身を結んだ症例ですね。こうしたケースが最近増えてきています。開院して5年を迎え、頑張ってきたことが形になってきているなぁと、手ごたえを感じています!




大人になっても病院はやっぱり行きたくないところ。痛かったり、怖かったりするイメージがあるのと、壁が白く、あまりにも整然としていて、なんとなく殺伐とした印象だからでしょうか。子供ならばなおさら、そのイメージを強く感じることでしょう。そんな近寄りがたい雰囲気を少しでも払拭できるようにと、二つのグループが院内の壁アートにご寄付をしてくださいました。

一つは一般病棟の壁です。地元でビジネスを展開しているタンサマイグループが、かわいらしいステッカーを丁寧に貼ってくれました(写真下-左上)。真っ白いタイルの壁でしたが、パッと華やかに!ステッカーは物語になっているので、子供たちが指をさして、お話をしている光景も見られました。

もう一つは新生児病棟です。こちらは、カナダのCWアジア財団からのご支援で、アーティストが実際にペインティングしてくれました(写真下-左下+右)。人懐っこい表情の動物がいっぱい壁に描かれ、新生児病棟へ行くのが楽しみになるほどです。限られた財源で運営を行うNPOでは、優先順位をつけて日々の運営を行わなければなりません。小児病院では最優先は医療コストですが、環境づくりも実はとても重要なことです。提供する医療の質も環境も全てまとめて一つのモデル病院となれるよう、今後も頑張りたいと思います。


とってもかわいく仕上がりました。こんな才能が欲しかったな~。

次の話題も、一見すると医療とはかけ離れているように思われるかもしれません。野菜畑のお話です。ラオスの前のプロジェクトであるアンコール小児病院では、院内に野菜畑を作り、院内で提供する食材にしたり、栽培方法を患者さんの家族に教えたりして、栄養指導の一つにしていました。LFHCでもこれに習い、畑をつくることに。増加する来院患者数に比例して提供する食材が増えるため、購入費もばかになりません。限られた財源を有効に使うために、日々試行錯誤しているのです。畑を作ることで、患者さんへの食材確保!教育提供!そして節約!の、一石三鳥を狙っています!

最初は農業の専門家に立ち上げを手伝ってもらい、その後は院内スタッフが手入れをする計画です。すでに緑色の葉っぱが少しずつ成長してきており、収穫が楽しみ。また後日、収穫の時にはお知らせしたいと思います。



きれいな緑色が目を引きます。

今年の冬はとても早くやってきて、すごく寒い!ご覧のように朝の気温は一桁が続き、それはそれは寒いです。これまでもこの時期に気温が下がることはありましたが、今年は特別でした。家の作りが寒さ対応にはなっていないので、暖を取るのは焚火か着こむことくらいしかできません。その影響か、入院患者さんに重症な火傷の子が多く見受けられます。常に4〜5人はいる状態がこの数か月続いていました。遊んでいて焚火の中に転んでしまった症例、お湯を沸かしている鍋によちよちの赤ちゃんがおしりをついてしまった症例、沸かしてあったお湯を頭からかぶってしまった症例などなど、かなり重症です。

キッチンが地面であることや、子供同士で面倒を見ることが多い結果かと予想されますが、火やお湯だけではなく、狩猟用の銃の暴発、薬の誤飲、ナイフや斧による外傷、ノーヘルによる事故外傷なども多く目にします。いずれも、安全を整えるだけで防げる症例といえましょう。安全な環境を整えることが健康の維持につながることを、退院前に院内で教育しています。



外来の身体測定をする場所では、開院以来初めてヒーターを設置し対応しました。


焚火の写真は、我が家のもので村のものではありませんが、こうした暖の取り方が一般的。消火しても高温が長く続きます。


お風呂が欲しくなる気温です。ルアンパバーンに来て5年、初めてヒーターを売っているのを見ました。高額で手が出ず…(;^_^A

LFHCは、ルアンパバーン県立病院の敷地内に建築され、建物は県立病院と通路でつながっています。LFHCが県立病院の小児科部門を担うということで、将来は、ラオス政府へ引き渡すことが予定されています。日々の運営は別々になっていますが、将来のゴールを視野に入れ、政府との協力体制を強化発展していくことが開院当初からの方針です。

そのため日頃から、定例ミーティングにはLFHCからも総務部長とラオス人医師が1名参加して意見交換を密に行い、手術を行う時は県立病院の外科医が担当します。そしてこの度、県内から来ているLFHCの入院患者に対してはCTスキャンを無料とすることが決定し、その同意書に署名がされ、正式に受理されました。県外からの患者さんに適応にならないのは、所轄が県ごとに分かれていることが要因と思われますが、それでも今回の決定はとても大きな一歩と喜んでいます。

どこの国でも同様ですが、政府の規則やシステムを変えるにはとても時間がかかります。そんな中でも、一つずつLFHCと政府のシステムが融合してきていることを感じるようになりました。開院当初の“お客さん”のような存在から“同志”の存在へ。開院5年が経ち、ラオス人スタッフのリーダー養成も進んで、段々と現実味を帯びてきています。これからさらに協力体制を強化していくことが重要ですね。


ラオス語ですが、これが政府との同意書です。

ラオスには1年に4回のお正月があります、と以前ご紹介したことがあります。12月は、少数民族の一つであるモン族のお正月です。LFHCの中にもたくさんのモン族スタッフがおり、今年はモン族スタッフが他の病院スタッフを招待し、モンニューイヤーのお祝いパーティーを開催してくれました。普段は子供の命を預かる医師や看護師も、この日はユニフォームを脱ぎ、早朝からお祝いの準備です。 パーティーはお昼過ぎに始まり、伝統のモン料理、カラオケ、スピーチなどで盛り上がり、そして、一大イベントは餅つき!(写真下)臼の形が平べったいですが、木製ですし、杵は日本と全く同じです。ついたお餅は女性が丸めて食べる準備をするのですが、日本の習慣にそっくりですね。文化のつながりを感じました。 こうした異文化交流の機会は、他者を尊重する気持ちを養う効果があるのではないかと思います。



二人とも医師。聴診器を包丁に変えて新年の料理を準備中です。


なんと、餅つき!臼の形こそ違いますが、日本と同じ!

2019年最後の2か月に起きた出来事でした。2020年は新年早々に新型肺炎が大きな問題となっていますね。ラオスの隣国である中国から広まっているようで、ラオスへも感染が広まらないかとスタッフも心配しています。新しい疾患に対応する度に新薬が開発されますが、またそれを追い越す疾患が発生します。追いかけっこですね。日々進歩する医療でもこの世から病を100%消滅させることは不可能かもしれないですが、だからこそ、信頼して受診できる病院とスタッフが必要だなと思いました。最新の機器や技術だけではない心のこもったケアを、このラオスに早く定着させたいと切に思います。 次回は開院5周年のお知らせをメインにご報告いたします。ぜひご期待ください。そして、今年もよろしくお願いいたします。

  フレンズ・ウィズアウト・ア・ボーダーJAPAN 代表
  ラオ・フレンズ小児病院 看護師               赤尾 和美


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